2014/3/25

昨年末、鳥取に行った際にうっかり衝動注文してしまったオーダーメイド万年筆がようやく届いた。

さっそく使っているが、なんと言ったらいいのか、触った瞬間にわかるよさというより、時間がたてばたつほどほど分かるタイプのよさがある。

思うに、ジェットストリームの登場は非常にエポックメイキングな出来事であったことは間違いないけれども、その影響が強すぎて、以来ペンの「書き味」というものは「なめらかさ」偏重の時代に突入してしまった感がある。すなわち、インクの摩擦係数の低さ=書き味のよさ、みたいな風潮。

低粘度系インクのペンはサラサラッとメモをとったりするにはとてもいいんだけれど、一方で制御がきかない難しさがある。タイヤがすり減った車を運転するのと一緒で、長時間の筆記だとかえって疲れてしまったり、そもそもブレーキが利かなくて字が流れてしまったりする。

書き味というのは、本来もっと複雑なものだと思う。摩擦係数はそのひとつの側面ではあるけれども、それ以外にも筆記に必要な筆圧、ペン先の傾斜角、重さ、重心、長さ、握り心地などなど、非常に多くの項目の細かい違いを人間は感じ取っているのだ。感受性というものをナメてはいけない。

で、この万年筆はというと、それらが全て「私のバランスの中におさまっている」ように感じるの。不思議と。最初にペン先をおろしたときには、ジェットストリームを手にしたときのような劇的さは感じないんだけど、書けば書くほどなじんでくるし、何ページ書いても疲れない。そしてこれから先、どんどんよくなってくるだろうという予感がする。半ば好奇心と使命感でのオーダーメイドだったが、ここまでやるとは正直おどろいている。博士おそるべし。

このペン1本に7万円は高いか安いか、人によって感覚のわかれるところだろうけど、一生かたわらに置く筆記具としては大変安いのではないかと個人的には思う。

余談だが、うちの弟(文房具に一切興味なし)にこの話をしたところ「ペン一本に7万とかwww」と散々バカにされたわけだが、当の本人は先日「男気焼き肉」(ジャンケンで勝ち抜いた1人が全員分を払って男気をみせる焼き肉のこと)でみごと勝って一晩の飲食代として7万払ったそうだ。

価値観とはまったく人それぞれである。みんな違ってみんないいけど。