2013/9/26

一時期、翻訳モノのミステリーにかなりハマっていたことがある。

なんでわざわざ翻訳物か?というと、日本のミステリーはコナンくんや金田一少年のように「トリック」を見抜くことに主眼が置かれることが多いですよね。あくまでも一般論だけど。で、翻訳物の方はというと、トリックもあるけどそれよりも「人間心理や純粋な論の展開を楽しむ」のが特徴で、私はそれが好きなんです。

特にハマったのは”Armchair Detective”(=安楽椅子探偵)系のミステリー。なぜかというと、探偵役が自ら動き回って現場検証などを行わない=視覚情報が少ないので、より心理面のプロファイリングやロジックの追求によるおもしろさが際立つから。

そんなわけで当時いろいろ読み漁ったのですが、その中からどれかひとつおススメを教えてください!と聞かれればまず迷いなく挙げるのがこれ。『九マイルは遠すぎる』(著:ハリイ・ケメルマン)。

九マイルもの道を歩くのは容易じゃない、まして雨の中となるとなおさらだ」

たったこれだけの文章から、ひとつずつ推論を重ねて行くことで次第にとある事件が浮き彫りになる…というストーリー。小説としては短いけど、飛翔するロジックのドラマチックさと裏腹に、場面は最初から最後まで2人の男の会話で展開されるというコントラストがカッコいいし、オチにはミステリーファンなら必ずニヤリとさせられるユーモアが効いていて読後感も小気味いい。

発売1976年という本なのに、帰り道に寄った本屋でなぜか平積みにされているのを見てたらいろいろ思い出しちゃったので書いてみました。ミステリー好きだけどこれは読んだことない!という方は、秋の夜長におひとついかが?