体の健康を維持するために必要なのが食事なら、心の健康を維持するために必要なのが「ときめき」である。

しかし、現実にはそうそうときめくような出来事は起こらないし、むしろこの歳になると起こったら起こったで逆に困る。その点、マンガなどのフィクションであれば、安心してときめきを摂取することができるのだ。

そんな私が今、最大限にときめいているのが、「ブスに花束を。」(3巻まで発売中)というマンガである。特に最新話は、なぜか涙が止まらなくなるほどキュンキュンした。しかし悲しいかな、周囲にこれを読んでいる人がいないのだ。このときめきは一人で抱えるには大きすぎる。できればみんなに読んでもらって、感想を語り合いたい。

それに良いか悪いかはおいといて、資本主義だよ世の中は。出版社だって営利企業。どんなにおもしろくても単行本の売れ行きが芳しくなければ連載が終わってしまう世知辛さ。せめて好きなものは好きといって応援したいのさ。という初期衝動だけで書いているのさ。長いからこの先は必ずしも読まなくていいけど、単行本は買ってください。

さて、「ブスに花束を。」がどういう話かというと、自称ブスで喪女の隠キャラの主人公、田端と、クラスいちのイケメンでみんなの人気者、上野くんを中心としたラブコメである。

そう書くと、よくあるシンデレラストーリーに聞こえるかもしれない。ブスっていいつつメガネとるとカワイイんでしょ、とか。そうじゃないの。田端は本当にブス。っていうか、素材としては中の中ぐらいだけど、センスのなさと自信のなさからくるコミュニケーション下手。

そのシチュエーションと思考回路は、学生時代、修学旅行なんかで私服行動の日があると、「なんで私服なんだよぉぉぉ学生なんだからずっと制服でいいだろぉぉぉ」と身悶えていた私からみても、圧倒的にリアル。魔法も魔法使いも登場しない。そんなに都合のイイことは現実には起こらない。

それじゃあ話が進まない、と思うじゃないですか。でも、このマンガでは、王子様ポジションの上野くんが、とにかく心がキレイ。だから、人の表面に惑わされず、地味で大人しいから目立たないけど、実は結構いいところもある田端の、本人ですらわかっていない魅力に、自力で気づくんです。

田端も自力。上野くんも自力。どこまでいっても「自力」のシンデレラストーリーなのです。

そしてその設定が、シチュエーションコメディとしても実に秀逸で、ギャグパートがとにかく笑える。田端の自己評価と、上野くんの評価にズレがあるから、お互い真面目に一生懸命にやっているのに、なんだかおかしなことになっていくのです(特に第9話の、田端が流れるように逮捕されかけるくだりは腹かかえて爆笑した)。

コメディ→コメディ→コメディ→きゅん→コメディ、というコメディ多めのバランスとスピード感が心地よくて、落差できゅんきゅんパートではよけいにきゅんきゅんさせられて、なぜか最後はホロリとしてしまうのです。

あと、登場人物がみんな魅力的で、イヤなやつがいない。恋のライバル(と田端も上野くんも気づいてないけど)の鶯谷さんだって、最初は打算的でイヤな女かと思ったけど、生まれつき美人っていうのもそれはそれで、見た目だけで変な男が寄ってきたりして大変なんだなってわかったり、周囲から期待されるキャラを演じるのもサービス精神っていうか、なんかいじましい感じがして、だんだん好きになってくる。

無表情で何考えてるかわかんないけど、実は誰よりも冷静でオトナで、さっぱりしたやさしさの五反田くんとか、隠キャから高校デビューでウェイキャラになったので田端にどことなく連体感を抱いてる新橋くんとか、生意気でマセてるけどなんだかんだいって恋する小学生なところがカワイイ上野くんの弟の圭介くんとか、みんなリアルでみんなイイ。

ここまで書いて勘のイイ方はすでにお気づきだと思うが、主要な登場人物はみんな山手線の駅名が名前になっているのです。次に出てくる駅名はなにか?予想する楽しみもあるかもしれません。

最後に。これはもう完全なる余談なんですが、私昨日、京浜東北線に乗っていたんですね。それで気づいたんですけど、上野の隣の駅は鶯谷なんだけど、急行だと停まらないんですよ。じゃあ、急行で上野の次の駅は?って路線図みたら、なんと、次は田端!田端なんです!もしかして作者、そこまで考えてる?すごい!ってなりました。

現場からは以上です。最新話がとにかく「上野くんーーーーーー!」って感じでヤバかったのではやく4巻が読みたいです。