もう1週間ほど前のことになるが、OKB48選抜総選挙の握手会に行ってきた。

改めて説明すると、OKBは「お気に入りボールペン」の略。今のボールペン界を代表する48本の中から自分の好きなペン(推しペン)に投票して、皆の筆箱のセンターを決めよう!という、まあシャレの効いたお遊びだ。

ウェブサイトからの投票も受け付けているが、遊びだからこそ本気で取り組んだ方がおもしろい。ここはやはり握手会(要するに試し書き会のこと)に足を運んで、自分の目と手で各々の違いをたしかめた上で投票につなげようと、いそいそと出かけていったわけだ。

しかも今年は、今までにない波乱(自分の中で)の予感があった。各メーカーから意欲的な新作ボールペンが多数投入され、また価格的な戦線が100円、200円のラインから1000円クラスに押し上げられる中、過去最高にメンバーの入れ替わりが激しかったのだ。その中にあって、私の推しペンは変わったのか、あるいは変わらないのか。

結論から言うと、去年のランキングから5本中3本が入れ替わりとなった。結果だけ並べると、以下のような感じ。

■去年のランキング
1位 ユニボールシグノ(三菱鉛筆)
2位 ユニボールシグノRT1(三菱鉛筆)
3位 ボールサインノック(サクラクレパス)
4位 マルチボール(パイロット)
5位 ユニボールアイ(三菱鉛筆)

■今年のランキング
1位 ユニボールシグノ307(三菱鉛筆)
2位 サラサドライ(ゼブラ)
3位 ボールサインノック(サクラクレパス)
4位 マルチボール(パイロット)
5位 リバティ(OHTO)

ここから先は、完全にオタクの世迷い言である。その上ムダに長いので物好きな人以外は読み飛ばして頂いて何の問題もない。

自他共に認める推しペンだったシグノRT1をランキングから落とすのは、本当に心が痛んだ。なにしろ、RT1が登場したときは本気で「書き味とデザインのバランスがこれほどに優れたペンは今後現れないに違いない!」と思うぐらい気に入っていたのだ。

でも、でもね。シグノ307が出たらね。セルロースナノファイバー配合でインク粘度が約50%低減されて、速く描いてもかすれやインク溜まりが生じにくい安定した筆記描線が得られるシグノ307を使ったらね。急に今までは全然気にしてなかったRT1の微妙~~~~なインク溜まりが気になって気になって仕方がなくなってね。だいぶ心が揺らいだわけです。

それでも、RT1にはまだデザインがある!307は見た目ががっちりしすぎてて個人的には好みじゃない!と踏ん張っていたのですが、「あれ…これリフィルの形状は同じじゃない…?」「307の替芯をRT1のガワに入れて使えばいいんじゃない…?」と気づいてからはあっさり307の軍門に下ってしまった。ごめんRT1。でも同じMチーム内の推し変だから許して。

もうひとつの新登場はサラサドライ。これは乾きが速いことが売りのペンだが、個人的には発色の良さが気に入っている。私は黒ペンは黒いほどいい、という価値観の持ち主なので、なんかこの粉っぽい、マットな漆黒の描線が好きなのだ。レーザープリンターで出力したつるつるのカラー面にもインクのノリと発色がいいのもポイント。OKBは黒だけだけど、校正用のペンとして仕事では赤も手放せなくなっている。ちなみにこちらは、サラサグランドの軸に入れて愛用中。だってやっぱり、カッコいい方が気分がアガるんですもの。

3位4位は変わらず。このあたりは、「メインじゃないけど特定のシーンでないと困るペン」である。ボールサインノックは細身なので、測量野帳と合わせて持つのにちょうどいい。マルチボールは、筆記面を選ばない強みがあり、他のペンではダメなんだ!という緊急事態において威力を発揮するので、出番は少ないがやっぱり外せないメンバーなのだ。

5位は自分の中ではダークホース的なポジション。

実は最近、ボールペン画を水筆で伸ばすというお絵かきにハマッている。万年筆画ではわりとよくある手法なんだけど、水性インクならボールペンでもできるじゃ?と思って試してみたらこれが意外と楽しい。今回握手会に参加したのは、この手法にマッチするペンを探すという裏テーマもあったのだ。

で、水筆を持ち込んで48本すべてで試してみたところ(上の写真はそれである)、OHTOのリバティはインクの伸び具合と絶妙な墨色が気に入ったので、出会いに敬意を表してランクインしたというわけ。

ちなみにこの水筆で伸ばす遊び、やってみてわかったのは同じ黒といっても実にさまざまな黒がある、ということ。例えばアクロボールなんかはすごく赤いし、逆にサラサドライは青い。子供のころ、理科の実験でペーパークロマトグラフィをやった人も多いと思うが、あの理屈だ。紙や水との親和性によって、インクの中に含まれる複数の色素が分離されるのだ。

だからなんだ、と言われればそれまでだけど、まあいいじゃないか。人とボールペンの数だけ、愛で方があってもいいのだから。こうやって普段何気なく使っている身近な道具にあれこれと思いをはせるのが、このような遊びの醍醐味なんである。