ある日、夫が「ワンピースが欲しい」と言い出した。
ひとつなぎの秘宝のマンガではない。着る方のワンピースだ。一体なぜそのような考えに至ったのかと聞いてみると、「着替えが1枚で済んで、締め付けるところもなくて、ラクそうだから」とのこと。「そんな良さげなものを女性ばかり着ているのはずるい、自分も着てみたい」のだと言う。
なるほど、ラクをするためには労力を惜しまない、合理主義者の彼らしい発想であった。
そういうことなら、Tシャツ素材で、ウェストがシェイプがされていない、ストンとしたシルエットのワンピースなら男性でも着られるのでは?とアドバイスしたところ、そんなのがあるなら本当に買いたいというので、近所のユニクロへ。
で、買ったのがコレ↓
マーセライズコットンロングTワンピース(半袖)
先の条件を全て満たす上に、サイドスリットがあるから、ワンピースを着慣れていない人でも足さばきがいいし、ポケットがあるのもポイント高い。ロング丈だから身長の高い男性でもギリOK(夫は177cm)
帰宅してさっそくジーパンからワンピースに着替えた夫。「コレは良いものだ」とすっかりお気に召した様子。その後、洗い替え用に通販でXLサイズを2枚買い足して(店舗ではLサイズまでしか置いてないのだ)、家の中ではすっかりワンピース姿が定着してしまった。
当初、見る側としては違和感もあったが、よくよく考えてみれば究極のリラックスウェアであるパジャマや、体に負担をかけないことを重視する入院着には男女兼用でワンピース型のものがある。また、着物・浴衣をはじめとして、民族衣装的なものはワンピースやスカート型が少なくない。
「ワンピース=女性の服」というイメージになったのは、歴史的にみればごく最近のことだろう。そのイメージにとらわれさえしなければ、「ラクな服」を追い求めることから「ワンピース」という結論にたどり着くのは、ある種の必然なのかもしれない。
そんなことを考えながら、ワンピース姿でくつろぎまくる夫を見ていたら、なんだかうらやましくなってきて、私も寝巻きをワンピースに変えてみた。
ズボッとひっかぶるだけで着替えが完了してラクだし、風通しがいいから風呂上がりの汗がさらっと引いていくし、締め付けもないし、たしかにこれは「良いもの」だ。
近頃は脚を出すことに抵抗があって、下にレギンスやタイツを履きがちだったが、寝巻きと割り切って1枚で着ることで、ああそうだった、ワンピース本来の開放感ってこれだった、と思い出すことができた。
これから気温と湿度がどんどん上がる季節。老若男女を問わず、リラックスタイムにはワンピースというスタイル、今後は流行るかもしれない。そして、ユニクロのロングTシャツワンピースが、男女兼用カテゴリに分類される日も、いつか来るかもしれない(し、来ないかもしれない)。