はじめに。私は、他の人がどうやって耐えているのか分からないレベルで、カナル型のイヤホン(いわゆる耳栓型のやつ)をつけたまま喋るのが苦手だ。自分の声の違和感が強すぎて、話すべき内容に集中できなくなってしまう。

コロナ前、イヤホンは「聞く」だけのものだったので、それでも特に問題はなかった。しかし、コロナの件があってから、オンライン会議が普通になり、必然的に「イヤホンをしたまま喋る」という超苦手なシーンが激増し、自分的には大変困ったことになってしまった。

なんとかならんかと調べるうちに、耳を塞がないタイプのイヤホンがあると知った。いわゆる、オープンイヤー型とか、ながら聞きイヤホン、と呼ばれるジャンルである。

この分野で一般的にファーストチョイスになるのは骨伝導式のヘッドホン。しかし、これはオーバーイヤー&ネックバンド型、というものが多く、自分の場合は髪型やメガネとの相性が悪いため、早々に選択肢から外れてしまった。

その次はambieが有名だが、個人的には見た目があまり好きではないのと、マイクの音質が今ひとつという評判を聞いてしまい、オンライン会議で使うにはどうかなぁ、とこれも購入には至らなかった。

そうなると残された選択肢はあまりなく、結局はSONYのオープンイヤーワイヤレスステレオヘッドセット(SBH82D)を購入して使っていた…のだが、SONYの公式HPを見るたびに、同シリーズの商品は次々と販売終了に…

うーん、やっぱりオープンイヤーはニッチなのか、消えゆく運命なのか…と半ば諦めかけていたところに飛び込んできたのが、LinkBudsという新機構のオープンイヤー型完全ワイヤレスイヤホン発売の一報である。

待ち望んでいたジャンルでの新製品発売に矢も盾もたまらず、発表の日に予約して、発売日にゲットしてしまった。そこからしばらく使ってみて、自分としては今のところかなり気に入っているので、今まで使っていたSBH82Dとの比較という形で使用感をまとめてみたいと思う。(ここまでが前置き。長い)

※必要以上に長くなってしまうので、LinkBudsとSBH82Dの仕様その他詳細については割愛。メーカーのHPをご覧ください。

LinkBuds
https://www.sony.jp/headphone/products/LinkBuds/

オープンイヤーワイヤレスステレオヘッドセット(SBH82D)
https://www.sony.jp/headphone/products/SBH82D/

■前提として
使用目的は、メインが仕事でのオンライン会議。
サブがiPadでの「ながら」動画視聴(運動、食事、家事など)
音楽はあまり聞く習慣がない。

■Windowsとの相性
SBH82D
 ヘッドセットとして使えない←
LinkBuds 使える!

ここが、購入前の一番の不安要素だった。なにしろ、SBH82Dはオンライン会議目的で買ったのに、仕事用PCのWindows 10と相性が悪いのか、そもそも「ヘッドセットとして使えなかった」から!(ひどい)。なんかね、どう頑張ってもマイクとイヤホンの機能が同時に使えなかったんですよ…結局、イヤホンとしてだけ使って、マイクはPC内蔵やWebカメラ内蔵のものを使ってた…これを買った意味…

LinkBudsは、ヘッドセットとしてちゃんとWindows10でも使えました!Windows 10で使えました!(大事なことなので2回言う)

でもなぜかヘッドセットとして使っていると、Windows側でボリューム調節ができない。イヤホン本体側での操作ではできるので一応使えてはいるからいいけど…謎である。

(完全に余談だが、発売前にガジェットをレビューしてくれる人はなぜか多くがMacユーザーなので、Windowsでの使用に関する情報が少なすぎると思う。世の会社支給PCはほとんどWindowsだと思われるので、オンライン会議でも使えると謳うなら、その辺りの情報は事前にもっと欲しいよね…)

■装着感
SBH82D
 どうやってもしっくりこない
LinkBuds 私の耳にはバッチリ、だけどたぶん人による

SBH82Dは正直、どう調節しても、最後までしっくりこなかった。あと、耳に引っ掛けてあるだけなので、ちょっとしたことですぐズレてしまいがち。

LinkBudsは、今までにない形状なので最初は手こずったけど、鏡を見たり、サポーターのサイズを色々試したりしているうちに、ピタッ!とくるポジションが見つかったので、それ以降はめちゃくちゃ快適になった。今では片手ノールックでもベストポジションに装着可能です。つけてる感がないわけじゃないけど、特に気にならない。激しく動き回っても口を動かしても落ちる気配なし。

ただし、これが合うか合わないかは正直生まれ持った耳の形次第、という気もする。どう頑張っても合わない、という人は一定数いそう。心配ならお店で試してから購入した方が安全かも。

あと、耳の形・大きさって結構左右差あるんだなっていうのがわかって面白かった。サポーターのサイズ、私は最終的に右耳はMサイズ、左耳はSサイズで落ち着きました。

■マスクとの相性
SBH82D
 最悪。メガネが絡んでくると発狂するレベル。
LinkBuds 最高。

LinkBudsは完全ワイヤレスなので、当然マスクとの相性は良い。ちゃんと装着できていれば、オンライン会議中にちょっとマスク外して水を飲む、なんてことも違和感なくできる。

SBH82Dは、何をどうやってもマスクと絡まる。マスクを外そうとするとイヤホンも外れるし、なんならメガネも釣られて落ちる。キレそう。

■音
SBH82D
 普通、だが遠い。
LinkBuds 結構良い、ちゃんと聞こえる。

基本的に音楽を聴く習慣がないので、音質は二の次だったけど、LinkBudsは普通に音がいい、と思う(大した耳ではない人間の評価だが…)

SBH82Dは、音を発する部分と耳が遠い構造のためか、音質以前に、全体的に音が小さい印象だった。オフィスでちょっと周りがうるさいと、MAXにしてもたまにオンライン会議の音が聞こえない感じ。電車なんか乗ってると、もう全く聞こえない。

LinkBudsは、音を発する部分(振動板)が耳穴のすぐ外なので、ボリュームを下げても割としっかり聞こえる。とはいえ、外の音もしっかり聞こえるので、電車で音楽を聞いたりする場合は、カフェのBGM程度の聞こえ方になる。だが、そもそも遮音性は度外視のコンセプトなので、うるさいところでも音楽をちゃんと聴きたい人が買うべき製品ではないと思う。

音漏れはしてないと思うが、それは自分が元々イヤホンの音は小さめが好きな人間だからかもしれない。LinkBudsで音漏れするほどボリュームを上げると、自分の耳が先にぶっ壊れる。

■マイク性能
SBH82D
 そもそもマイクとして使えなかったので評価できない
LinkBuds 良い

SBH82Dは、先にも書いたようにヘッドセットとして使うことができなかったので、マイクの評価はなし(オンライン会議のために買ったのにお前ェ…)

LinkBudsは、Windows 10でもヘッドセットとして使えるし(まだ言う)、ノイズキャンセリングが優秀らしく、オンライン会議用のマイクとしては優秀。

■マルチポイント
SBH82D
 あり
LinkBuds なし

マルチポイントというのは、2台以上の機器に同時に接続しておける機能。LinkBudsにはこれがついていなくて、他の人のレビューを見ると「この価格帯なら欲しかった」と言われているポイントでもある。

とはいえ、SBH82Dでマルチポイント(2台まで同時接続)を使っていた感覚では、別になくてもいいかな…というのが正直な感想。オンライン会議でイヤホン使っているのに、接続している別の機器で通知がくるとオンライン会議の音が一瞬途切れたりして、意図しないつながり方をするのがあまりよろしくなかった。

LinkBudsは、マルチポイントはないけど、複数の機器に接続情報を登録できるマルチペアリング(8台まで)はある。これをやっておくと、たとえ別の機器につながっていたとしても、その時使いたい機器のBluetooth設定でLinkBudsを選ぶだけで直感的につなぎ変えることができるので、接続を意識的にコントールできるという意味で、私はこっちの方が便利な気がしている。

「絶対この2台の組み合わせでしか使わない」という人はマルチポイントの方が便利なのかな。

■携帯性
SBH82D
 最悪
LinkBuds 良すぎて怖い

SBH82Dは、どうやって持ち運ぶのが正解かわからないほど、持ち運びにくい。イヤホン部分がそもそも大きめだし、釣り針状になっているから1200%の確率で絡まる。私は持ち運ぶことやまとめることを途中で諦め、フックに吊るして保管していた(それでもイヤホン部分は絡まる)。

LinkBudsは、届く前にイメージしていたよりふたまわりくらい小さくて、携帯性は申し分なし。ただ、ケースもイヤホン本体も小さくてツルツルしているので、ポロッと落っことしてなくしそうなのが怖い。駅のホームとかではケースからの出し入れ・つけ外しはしない方が良さそう。

■見た目
SBH82D
 普通
LinkBuds 形はいいけど、素材が…

LinkBuds、形的には機能がデザインに反映されている感じで個人的に結構好き。ただ、素材が…再生プラスチックを使っているということで、その雰囲気を出すためにあえて混ざり物を見せているとは思うのだが、なんていうか…白いケースがいつの間にかホコリまみれになってる!って感じで毎回ドキッとしてしまうのよね。普通の無地の方が良かったなとは思う。

■充電が切れたとき
SBH82D
 使いながら充電できる
LinkBuds 片耳ずつ使える

基本的に、イヤホンを長時間つけっぱなしにするような使い方をしないので、個人的に連続使用時間は実はあまり気にならないポイントではある。

唯一あり得るのが、半日以上に及ぶ長時間のオンライン会議で使う場合(それもそうそうないが…)。充電が切れそうになっても、SBH82Dは、使いながら有線で充電できるのでPCの前にいる限りは特に問題はなかった。

LinkBudsは、右用でも左用でも片方だけで使える(※アプリ連携の設定をOFFにしている場合)&10分充電で90分使用の急速充電に対応しているので、最悪の場合は片方ずつケースに戻して充電するなどで乗り切ることはできそう。

■その他
LinkBudsは、ワイドエリアタップといって、こめかみあたりをタップすると振動を検知して操作できる機能がある。タップ2回だと再生/停止、3回だと曲送り、とか(アプリでいくつかのパターンから設定できる)

この「機器本体ではなく自分の体を触って操作する感じ」がちょっと面白い。サイボーグになったみたいで楽しくて新感覚。

慣れるとAppleWatchで操作するよりも早いし、片手でOKなのも便利。ただし、イヤホンの位置をちょっと直すとか、マスクを外すとか、別の動きを検知してしまうこともある。顔を触ったりするクセがある人にはかえって不便かも。

でもはっきりいって、LinkBudsは万人向けのものではない。あくまでも「耳をふさがない」というオープンイヤー型ならではの特性を理解して、そこがいいねって共感できる人にしかおすすめできない。

私がLinkBudsを使うシーンは、まずオンライン会議。それから、運動するとき(ケーブルがこすれてガサガサいう音がしないし、動きのジャマにもならない)、料理をするとき(ジュージューいう音なんかも大事な情報なので)、ご飯を食べるとき(自分の咀嚼音が気にならない)あたりだと思う。

音楽をしっかり味わって聴きたいとき、ガヤガヤした場所で外界から自分を切り離す手段としてのイヤホンを求めているときは、私だってカナル型を使う。

とはいえ、オープンイヤー型という選択肢のほとんどない不毛のジャンルに、こうして広く注目されるイヤホンが出てきたのは、とても嬉しいことだ。イヤホンしたまま喋るの苦手族の一員として、これを機にジャンルが盛り上がって、色んなメーカーから色んなイヤホンがじゃんじゃん出るといいなと願っています。頼むよ!音響機器メーカーのみなさん!