2016/03/29

社会人になると毎日のことなのであまり気にしていなかったが、近ごろ改めて「通勤ラッシュっておもしろい」と思うようになった。

きっかけは、先日朝8時台にめずらしく新橋でJRから銀座線に乗り換えたこと。あくまでも個人的な印象だが、新橋は東京や渋谷、新宿などと違って、観光客が少ない。しかも銀座線乗り換えといえば、行き着く先は霞が関方面のオフィス街。圧倒的に「通勤している人」の割合が多いのだ。

そのため、人は多いのだが、「通勤部隊」と称しても過言ではないほどの統制の取れっぷり。乗り換えの動線もクッキリパッキリ出来上がっていて、いったん流れに乗ってしまえば意外にもストレスは少ないのだった。

これはきっと、低いところに集まった水の流れが土を削り、次第に川筋が出来上がるように、みんなが毎日毎日通勤する中で少しでもストレスが少ない方へと小さな工夫と暗黙のルールを積み重ねていった結果に違いない。

そんなことを考えていたら、今日たまたま「春から「満員電車デビュー」する人たちに向けて描かれたマナー講座マンガが秀逸!」という記事をみかけた。

漫画の最後の「(満員電車は)一人ではなく、チームワークで乗っている」というセリフも秀逸だが、個人的にいちばんおもしろいと思ったのは、これがいわば「通勤部隊の暗黙知を春から入隊する新兵たちに明文化して伝えようという試み」である、という点だ。

たしかに新入社員になったとき、ビジネスマナーの研修はあっても、「通勤の作法」は誰も教えてくれなかった。身体で覚えるしかなかったのだ。それが明文化されていれば、習得までの時間短縮につながるに違いない。

というわけで、前置きが長くなったが、せっかくだから私も自分が持っている「通勤テクニック」をひとつ紹介してみよう。

「人混みを歩くときは、目の前の約1mに集中すること」

これである。人混みに慣れていないと、周囲の状況を把握したいがためについつい目線をあげてキョロキョロとしてしまいがちだが、これは逆効果。目に入ってくる情報量が多すぎて、脳がシミュレーションをするためのメモリを食い尽くし、予測の精度を落としてしまう。結果、目の前の人に気づくのが遅れたり、予測と違う動きをする人が現れて慌てたりすることになる。

そこで逆に、目線を下げて、地面を見る。それも、自分の足の先から半径1mくらいの範囲に集中する。周囲の人の動きを全てシミュレーションする必要はないのだ。大事なのは、「次の一歩をどこに出すか」を正確かつ素早く判断するのに必要な予測の精度を上げることだ。そのためには、すぐ目の前の人の足の動きだけが視界に入ればよく、それ以外の情報はノイズに過ぎない。

私はこれに気がついてから、人混みを歩くときに人にぶつかったり、思うように進めなくてイライラすることがほとんどなくなった。慣れると、障害物のない道をまっすぐ歩くのと同じペースで人混みの中をスムーズに移動できるようになり、ちょっとした忍者気分が味わえる。

4月から通勤ラッシュに巻き込まれる予定の方、あるいは観光で慣れない人混みにダイブする予定の方は、よかったら試してみてください。