2019年の大河ドラマ「いだてん」が終わった。世間では視聴率が低いだなんだと色々言われてもいたけれど、個人的にはすごくよかった。もしかすると、私が第1話から最終話まで欠かさずに見た、初めての大河ドラマかもしれない。

とはいえ、「誰もが知る歴史上の英雄の生涯を追う」という、いわゆる「大河ドラマ」を期待してみた人は、ちょっとつまらなかっただろうな、と納得する部分もある。なぜなら「いだてん」は、普通の人がいっぱい出てきて、それぞれが普通に頑張るという、小さなドラマが連続する話だったから。

でも私には、なんだかそれがすごくグッときたのだ。

便宜的に「主演」という立ち位置の人はいるけれど、実は登場人物全員が「主役」なのだ。彼らの人生の、そして彼らが生きた時代の。普通の人がそれぞれの人生を一生懸命生きること、その小さなドラマが無数に集まって次第に大きなうねりとなって、ひとつの「時代」を築いているのだ。それはつまり、今を生きる私たちひとりひとりも、今という時代の「大河の一滴」だということ。それを実感させてくれるドラマだった。

型破りかもしれないけれど、私には間違いなく大河ドラマだ!と感じられたし、異なる価値観や個性を持つひとりひとりの多様性を尊重しなければいけない今この時代において、これを放映してくれたことには大きな意味があると思う。

しかし、「俺の」「私の」が絡みあって「みんなの」になるという物語のテーマ故に、めっちゃくちゃ複雑なガントチャートみたいになってしまったストーリーラインを最後まで見せ切る脚本構成は見事だった。また、俳優さんたちの演技も、それぞれ決して多くはない登場シーンの中で、全員が「ひとりひとりが主役!」を強烈に印象付けるものばかりで。こんなに好きな登場人物が増えた大河も初めてかもしれない。とにかく、出てくる人は全員好きになるレベル。最終回に出してもらえなかった美川くんも、そりゃ最終回に出てこないよな〜コイツは、って感じで、それはそれで美川くんらしくて好きだ。

あとは、演出とそれを支える映像技術。特に関東大震災のところは「ああああこうやって表現するのか〜〜」とやられた感がハンパなかった。これ以外にも、落語や演劇的な抽象表現をテレビドラマに取り入れる演出が随所にあって、学生時代の部活動程度といえど演劇をかじった人間としては唸るしかなかった。

見てない人にはなんのこっちゃな話だろうけれど、視聴率とか関係なくいいものはいいと言いたいぜ!という気持ちが冷めないうちに書き残しておこうと思ったのでした。